第331章 《終点》（1）

有栖川涼は我に返り、常盤燿子の手を引いて歩き続けた。しかし、あまり遠くに行かないうちに、彼は突然穏やかな口調で言い出した。「トラブルメーカー、子供を作ろうか」

歩行者天国にはほとんど人影がなく、時折吹き抜ける風の音以外は、静寂に包まれていた。

有栖川涼の突然の言葉は、穏やかな歌のように、一言も漏らさず、はっきりと常盤燿子の耳に届いた。彼女は彼と共に前に進んでいた足取りが、突然その場に凍りついた。

有栖川涼は彼女が立ち止まるのを見て、自分も立ち止まり、振り返って彼女を見つめた。

風が吹き、彼女の長い髪が彼の胸元を撫で、数本が彼の首筋に触れ、くすぐったく、心地よかった。

この瞬間、世界全体が静止したかのように、長い間極度の静けさが続いた。常盤燿子の真っ直ぐ前を見つめていた視線が、ようやくゆっくりと有栖川涼の胸元に移り、それから少しずつ上へと上がり、最後に驚きと信じられないという表情を浮かべながら、有栖川涼の美しい目と合わさった。彼女はすでにはっきりと聞こえていたのに、口を開くと、まだ確信が持てないかのように、もう一度尋ねた。声は彼女自身でも抑えられない震えを含んでいた。「あなたが言ったのは...私たちが？子供を？」