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遠く離れた東京。
有栖川涼の会社を訪れたことのある常盤燿子は、慣れた様子で有栖川グループの地下駐車場に到着し、エレベーターに乗って受付に向かった。
以前、和泉沙羅が会社に来た時は、最上階の方で彼女を様々な形で阻止していたが、前回彼女が来た時は大BOSSが特別に彼女を上げるよう指示していた。しかし今回は通知を受けていないため、受付は少し躊躇した後、常盤燿子を上階に行かせることができなかった。「和泉さん、有栖川社長は今日会社にいらっしゃいません」
「いないの?」常盤燿子は少し残念そうに尋ねた。「じゃあ、どこに行ったか知ってる?」
「出張に行かれたようですが、具体的にどこかは私にもわかりません」
「そう」常盤燿子は答えた後、数秒間立ち止まり、受付に友好的な笑顔を向けて「ありがとう」と言い、立ち去った。