今は夜で、ここには人があまりおらず、中年の警官は不安になり、常盤燿子も何か問題があるのではないかと心配して、急いで車を施錠し、ガードレールを乗り越えて、常盤燿子の姿を追いかけた。
彼女はハイヒールを履いており、歩き方がふらついていて、何度も転びそうになった。
彼女の後ろを追いかけていた中年の警官は何度も「気をつけて」と注意したが、常盤燿子は靴が邪魔で走りにくいと思い、結局ハイヒールを脱いで、素足で走り出した。
河岸には硬いものばかりで、常盤燿子の足の裏は痛みを感じたが、彼女はまるで感じていないかのように、目を赤くして、中年の警官よりも速く歩いていた。
彼女は岸辺に立ち、「有栖川涼」という名前を二度呼んだ。
夜の河原は静寂に包まれ、彼女に応えるのは水の流れる音と風の音だけで、他の音は何もなかった。