第409章 彼女の一目で、彼の一生を買い取った（9）

「四時十分になったわ。彼女に電話して、どこまで来てるか確認してみるわ…」

入り口に立ち、虚ろな目をしていた常盤燿子は、高橋静香のこの言葉を聞いて、はっとわれに返った。彼女はバッグから素早く携帯を取り出し、マナーモードに切り替えたところで、高橋静香からの電話がかかってきた。

彼女はすぐには出ず、キャリーケースを引きながら、近くのトイレに急いで入り、壁に寄りかかって目を閉じ、深呼吸してから画面をスライドさせて電話に出た。

携帯を耳に当てると、すぐに高橋静香の率直な質問が聞こえてきた。「どこ？」

「エレベーターの中よ、すぐ上がるわ」201号室の入り口で偶然耳にしたあの会話が、まるで呪いのように彼女の耳の中で繰り返し響いていた。彼女は必死に声を落ち着かせて高橋静香に返事をし、相手がさらに何か言う前に急いで電話を切った。そして壁に背中をつけたまま、ゆっくりとしゃがみ込んだ。