和泉沙羅が何を考えているのか、彼は理解していないわけではなかった。
彼女が彼にトラブルメーカーが誰なのか教えてくれなくても、構わない。彼は待つ。
彼女が彼を手に入れられないなら、彼を引きずって一緒に苦しむつもりでも、構わない。彼には彼女をもっと苦しめる方法がいくらでもある。
この数日間、彼は彼女と話さないか、話すときはいつもトラブルメーカーのことばかり話していた。
彼女を打ちのめすような言葉を伝えたいときでさえ、いつも大和くんを通して伝えていた。
……
運転していた大和くんは、有栖川涼の指示を聞くと、すぐに携帯を取り出し、手慣れた様子で本家の電話番号をダイヤルした。
この8ヶ月の間、彼は有栖川涼の代わりに多くの不愉快な言葉を伝えてきたので、最初のためらいや言いづらさはもうとっくに慣れてしまっていた。