電話の向こうの有栖川涼は少し黙った後、再び口を開いた声は、穏やかで落ち着いていた。「さっき電話してきたの?」
有栖川涼の前後の話題の転換が早すぎて、常盤燿子はしばらく反応できなかった。
有栖川涼は電話の向こうで、また声を出した。「さっき温泉に入っていて、携帯を持っていなかったんだ」
常盤燿子はようやく思い出した。彼女がロビーの休憩室で有栖川様と和泉沙羅に会った時、有栖川涼に電話をかけていたことを。そして彼女は言った。「あの時お電話したのは、有栖川様と和泉さんがいらっしゃったからです」
……
有栖川涼が温泉から上がってきた時、大和くんはすでに携帯を持ちながら、温かい石のベッドに横になって休んでいた。
大和くんは彼を見ると、すぐに言った。「有栖川社長、有栖川様と和泉さんがまた私に電話してきました」