指先が画面に触れようとするその瞬間、有栖川涼は携帯電話を再び強く脇に投げ捨てた。
電話をかけて何になる?彼女に、自分と和泉沙羅には何の関係もないと伝えるのか?それとも彼女を叱りつけて、今後和泉沙羅を自分に絡めないようにと言うのか?
だが彼女は彼にとって誰なのか?
叱るのは忍びない。説明する資格も彼にはない。
有栖川涼の胸の内の怒りは、さらに激しく燃え上がった。
よく考えてみれば、トラブルメーカーがいなくなってから、彼はこれほど怒りを感じることがなかったような気がする。
有栖川涼はタバコを口元に持っていき、強く一服吸い込んでから、勢いよく吐き出した。空中に漂う煙を見つめながら、彼は苛立たしげに手を上げ、自分の髪を乱暴に掻き毟った。
彼女が自分の探しているトラブルメーカーかどうか確信はなくても、彼女に自分と和泉沙羅のことをこのように誤解されたくはなかった。