第515章 帰期の定まらない人を待つ(5)

大和くんは常盤燿子がこれほど惨めな状態で、和泉沙羅に徹底的に踏みにじられ、彼女の前で掃除をさせられているのを見て心が痛んだが、今彼が常盤燿子を庇い続ければ、彼女の立場をさらに苦しくするだけだと思った。彼は密かに歯を食いしばりながら、説明しつつ常盤燿子の方へ歩いていった。「私がやると言ったのは、常盤秘書がさっきミスを犯して、ここにいることで、あなたと有栖川様の目障りになるのではと心配したからです。もしお気にならないなら、常盤秘書に片付けさせましょう。」

そう言いながら、常盤燿子の前まで来た大和くんは、和泉沙羅と有栖川様が気づかないうちに、常盤燿子に口の動きだけで「辛いだろうけど我慢して」と言い、手に持っていた雑巾とモップを常盤燿子に渡し、早く掃除を終わらせるよう促した。