第514章 帰期の定まらない人を待つ(4)

大和くんは言葉に詰まり、しばらく黙った後、常盤燿子の方を見て、目配せをして早く謝るように促した。そうすれば、この件はすぐに終わるだろうと。

この部屋の中で、常盤燿子と和泉沙羅の二人だけが、彼女が無実であることを知っていた。

しかし、それを口にしても誰も信じないだろう。ましてや、彼女はただの実習生に過ぎなかった。

有栖川様を後ろ盾にしている和泉沙羅にどうして敵うだろうか?

それに、大和くんのあの目配せは明らかに、賢者は時勢を知るものだと暗示していた。大事を小事に、小事を無に。

常盤燿子は手をきつく握りしめ、目を伏せたまま有栖川様に向かって頭を下げ、声を出した。「有栖川様、申し訳ありませんでした。」

有栖川様はどこも怪我をしていなかった。彼はこれだけの年月を生きてきて、若い頃からこだわりの強い人ではなかった。今や年老いて、なおさら若い女の子と争うはずがない。彼は常盤燿子が謝るのを見て、一瞬の躊躇もなく手を振り、この件は水に流すと示した。