第509章 マンゴージュース、トラブルメーカー、終点(9)

彼は陸田透真が何を言ったのか尋ねることもなく、陸田透真が次に何を言おうとしているのかを聞くこともなく、ただゆっくりと立ち上がり、背後のコートを手に取って立ち去った。

もしあの瞬間に無限の希望を抱いていなければ、おそらく今、こんなにも失望することはなかっただろう。

よく考えてみれば、今夜は大阪大学で彼女と知り合って以来、初めてこんなに気分が悪いのだろう。

有栖川涼は車を運転しながら、東京都内をでたらめに回り、最後には彼がよく行く願いの泉に向かった。

夜の冷たい風が、ヒューヒューと吹いていた。

彼は薄手のパーカー一枚だけを着て、真冬の寒さの中に立っていたが、寒さを感じなかった。

彼は願いの泉に向かって一枚また一枚とコインを投げ入れ、一つまた一つと願い事をした。最後には、まるで力尽きたかのように、願いの泉のそばにしゃがみ込み、タバコに火をつけて指の間に挟んだが、吸わなかった。