第520章 帰期未定の人を待つ(10)

「私も何も手伝えなかったけど。」大和くんは彼女のお礼の言葉に少し恥ずかしくなり、手を上げて髪をかきむしった後、常盤燿子を慰めるように言った。「常盤秘書、今日の午後のことは、あまり気にしないでください。」

常盤燿子は軽く頷き、微笑みながら「うん」と返事をした。

大和くんは胸をなでおろすように言った。「有栖川社長が間に合って来てくれて良かったです。そうでなければ……」

少し間を置いて、大和くんはまたため息をついて言った。「私たちが帰った後、きっと有栖川社長と有栖川様はまた喧嘩したでしょうね。」

常盤燿子が有栖川涼の秘書になってから、大和くんとは毎日接触があり、二人が親しくなった後も、仕事以外のことについて雑談することはあったが、有栖川涼について触れることはほとんどなかった。