「はい、有栖川社長。」大和くんは手早く有栖川涼の言葉に返事をすると、常盤燿子に目配せをして、有栖川涼の指示通りにするよう促した。そして笑顔の素敵な店員について、レジへと向かった。
……
常盤燿子は有栖川涼の前まで歩み寄ると、彼の端正な顔立ちをしばらく見つめてから、そっと彼の向かいの席に座った。
彼は彼女の接近を感じたが、目を開けなかった。
休憩スペースには彼と彼女以外、誰もいなかった。
店内ではリラックスできる音楽が流れていたが、周囲の雰囲気はやはり少し緊張感があった。
常盤燿子が彼女と有栖川涼がこのまま無言で沈黙し続けるだろうと思った時、男性の清らかで心地よい声が突然聞こえてきた。「今日のことは、申し訳ない。」
有栖川涼がこの言葉を言った時、ずっと目を閉じたままだったが、彼女は彼に向かって素早く何度か頭を振った。「大丈夫です、有栖川社長。」