秘書室に戻るとすぐに、数人の秘書たちが常盤燿子を取り囲んで噂話を始めた。
「燿子ちゃん、さっき有栖川社長のオフィスで一体何があったの?」
「そうよ、あなたと皇族はその後どこに行ったの?」
「……」
常盤燿子は和泉沙羅が自分に仕掛けた嫌がらせのことも、有栖川涼のプライベートなことも漏らすわけにはいかなかった。だから、みんなの様々な質問に対して、彼女は心の中で言葉を選んでから口を開いた。「具体的に何があったのか、私もよくわからないの。有栖川社長が来てから、私と大和運転手を別の用事で外に出したから」
「ああ、そういうことだったのね……」
みんなはそれを聞いて、信じたようだった。
しばらくして、また別の秘書が口を開いた。「でもね、これが初めて男性の怒りに怯えたわ。直接見てなくても、ドア越しに聞こえてきただけで半分死にそうになったもの」