第524章 帰期の定まらない人を待つ(14)

上には何もなく、そこに置かれていたはずの清朝の陶磁器が見当たらなかった。

オフィスの床はきれいに掃除されており、きっと誰かがすでに掃除したのだろう。

つまり、先ほど高島屋で見た彼の手の甲の傷は、有栖川様に陶磁器で殴られてできたものなのか?

同僚たちの会話は簡潔だったが、常盤燿子はその時の危険な状況を想像することができた。

みんながあれこれと話し続ける中、常盤燿子はもう聞いていられなくなった。彼女は静かに脇に立ち、しばらくぼんやりとした後、パソコンの画面を見ると退社時間になっていた。まだ終わっていない仕事があることを思い出し、USBメモリにデータを移して、バッグを持ち、皆に小さな声で「さようなら」と言って先に帰った。

地下鉄に乗って家に帰ると、常盤燿子はラーメンを一杯作り、お腹を満たした後、寝室に戻ってパソコンを開き、日中に終わらなかった仕事に取り掛かった。