第525章 帰期未定の人を待つ（15）

有栖川涼はタバコに火をつけ、まぶたを少し持ち上げたが、話には応じなかった。

彼の隣に座り、かつて彼の下の寝台で寝ていた戦友が口を開いた。「絶対独身だよ、俺たちの有栖川隊長は、不婚主義者だからな！」

今日の午後に彼女に会ったせいか、それからトラブルメーカーのことを思い出したせいか、あるいは酒を飲んだせいか、人は少し感傷的になるものだ。一晩中ほとんど口を開かなかった有栖川涼が、突然声を出して二文字だけ言った。「違う」

一同は有栖川涼が突然発した二文字に驚き、一斉に彼の方を見た。

有栖川涼は見ていないかのように、テーブルからタバコとライターを取り、ゆっくりと火をつけ、一服吸ってから、先ほどの言葉を続けた。「俺はもう不婚主義者じゃない」

煙が立ち込める中、部屋の人々の姿がぼんやりと見える。彼の目の前にはあの夜の光景が浮かんできた。歩行街で彼女と一緒にいて、彼女が歌い終わった後、彼が彼女に深いキスをした時、心の底に浮かんだ思い：トラブルメーカー、今になってやっと分かった、いわゆる不婚主義というのは、ただ一生を共にしたいと思わせる人に出会っていなかっただけなんだ。