「姉さん!お姉さん!」
星野心は急いで橋本楓を押しのけ、ドレスの裾を持ち上げて階段を駆け上がった。
その光景を見た人々は、一瞬驚きの表情を浮かべた!
これまで星野市長の娘は星野心だけと聞いていたのに、彼女が今、あの黒衣の女性を「お姉さん」と呼んだのだ。しかも、体裁も構わずに叫びながら駆けていくなんて?
一体何が起きているのだろう?
皆が驚いて顔を上げ、星野心が走っていく方向を見ると、二階の廊下に細い黒い影がかすかに見えるだけだった。
橋本楓もその様子を見て眉をひそめ、考えた末、彼女の後を追って階段を上がった。大広間は一瞬にして騒がしくなり、下からはひそひそ話す声が聞こえ、皆が驚いた様子で二階を見つめていた。
「止まりなさい!」
星野夏子が身を乗り出した瞬間、高橋文子の厳しい声がすぐに響いた。夏子は無視しようとしたが、彼女の後ろにいた二人の黒服の男性がすぐに前に出て、一瞬で夏子の行く手を阻んだ。