名門の盛大なパーティーの席で、私、星野夏子の婚約者はあろうことか実の妹にひざまずき、プロポーズをした。一瞬にして相続権を奪われ、星野家からは政略結婚の駒として、まるで生贄のように差し出される運命に。
すべてを失い、心の底まで凍てつくような絶望の中、これまでの全てを葬り去ることを決意した夏子は、最後の望みをかけてある男のもとへ向かった。彼は、瑞穂市で並外れた権力を握る『清川グループ』の若き総帥、藤崎輝。誰もが近寄りがたいオーラを放つ、クールな男。
「藤崎さん、わ、私と、結婚してください」
書類の山からふと顔を上げた輝が、夏子を捉えると、静かに立ち上がった。
「行こう」
「……どちらへ?」
「急げ。役所がもうすぐ閉まる」
こうして始まった、偽りの結婚生活。けれど、ある夜――
「そろそろ義務を果たしましょうか、奥さんとして」
「そ、そんな興味がないと聞いていたのよ!?」
「さあな、試してみましょうか」
そして、甘く乱れた一夜が明け――
「藤崎輝!この大嘘つきっ……!」