第506章 来訪(二)

この言葉を聞いて、須藤旭はようやく手を上げて眉間をこすりながら言った。「確かにそうだな。斉藤惇という男は測り知れない。彼が何をしたいのか誰にも分からない」

そう言いながら、彼は姿勢を正し、テーブルの上からタバコを取り出して藤崎輝に一本渡し、自分も一本に火をつけた。眉をひそめて煙を吐き出してから、ため息をついて続けた。「実際、斉藤礼という人物も表面上見えるほど単純ではないと思うんだ。どう思う?」

須藤旭は無表情な藤崎輝を見上げ、その目には不気味な冷たい光が宿っていた。

藤崎輝は手にしたタバコを置き、くつろいだ様子で立ち上がり、脇にあるバーカウンターに歩み寄ってウイスキーを二杯注いで戻ってきた。

「彼こそが岸から火事を眺める人間だ。すべての行動は斉藤惇と大野琴子が行っている。仮に斉藤峰が裏に引っ込んで斉藤惇に全体の采配を振るわせているとしても、斉藤峰が斉藤凱を掌握したいなら、手を出さないわけがない。そうでなければ、どうやって人々を従わせるのか?しかし斉藤礼は違う。彼が斉藤凱を掌握することは他人から見れば当然のことだが、斉藤峰は...」