第503章 私は季野桐子(二)

「君のことは少し覚えているよ、季野桐子。あの特訓キャンプの上位3人の一人で、実力は悪くなかった」

藤崎輝は簡単に評価した。彼は須藤旭や渡辺薫たちとその訓練を終えた後に退役し、今では5、6年が経っていた。当時この季野桐子は新兵連から推薦されてきたようで、18、19歳くらいの年齢だった。数年があっという間に過ぎ、今では20代半ばになっていた。外見は当時の幼さが抜け、今では鋭さと深みが増していた。

「藤崎教官は記憶力がいいですね」

季野桐子は冷淡に答えた。

藤崎輝は淡々と微笑み、手元の書類を置いて、彼女を横目で見ながら言った。「君の状況については、真が全て私に説明してくれた。君の身のこなしは素晴らしく、洞察力も高い。対諜報能力も強い。あらゆる面で私は満足している。真も君に大まかな任務内容を伝えたと思うが」

「全力を尽くして奥様の安全を守ります!」

季野桐子は力強く答えた。

藤崎輝は満足げに頷いた。「よろしい。君の責務は彼女を守り、彼女の専属アシスタントとなることだ」

「さて、皆さんお互いに顔を合わせたことだし、これからはお互いに助け合っていけばいい」

藤崎輝はそう言い残すと、星野夏子のオフィスに電話をかけ、彼女に上がってくるよう伝えた。

10数分後、星野夏子はいくつかの書類を持ってようやく姿を現した。ドアを開けてオフィスにいる数人を見て少し驚き、特に季野桐子を見たときには何度も目を向け、それから細めた目で藤崎輝を見つめ、その眼差しには疑問が宿っていた。

「夏子、こちらは季野桐子だ。これからは君の専属アシスタントになる」

藤崎輝は淡々と紹介した。

「星野監督、こんにちは。季野桐子と申します。桐子とお呼びください」

季野桐子も同様に淡々と一礼して言った。

星野夏子はそこで以前藤崎輝が女性ボディガードを雇うと言っていたことを思い出した。特に彼女がトンネルで足止めされた事件を知った後のことだった。彼女は一度断ったが、今回は直接人を連れてきたようだ。

考えた末、今は非常時であることを理解し、頷いて答えた。「こんにちは、私は星野夏子です。夏子と呼んでください」

「さて、もう顔合わせも済んだことだし、今日から君は責務を果たしてほしい。真、まずは彼女を連れて行って落ち着かせてくれ。皆さんも出て行ってください」