第330章 西園に戻る（一）

ここまで話したところで、雰囲気は急に静まり返った。須藤菜々も星野夏子の感情がどこか違うと感じ、顔を上げて彼女を見ると、彼女は無表情な顔をしていたが、星のような瞳には揺らめくものがあった。

「私はただ物語の始まりを知っているだけで、今のような展開になるとは思ってもみなかった。時には、縁というものがこうも不思議なものだと感じずにはいられないわね…」

星野夏子は突然軽く息を吸い込み、そう言いながら、ふと横を向いてキッチンの方向を見た——

そこでは、彼女が一生守り従うと約束した男性が、彼女のために夕食を準備していた。

数ヶ月前まで、彼女は彼のことを全く知らなかったし、彼と何か関わりを持つとも思っていなかった。しかし今、彼らは結婚という絆に忠実であることで最も親密な関係になっていた。

しかし、彼女と橋本楓との十数年、二十年近くの追いかけっこは、結局は水に映った花や月のように儚いものだった。石一つ投げ入れれば、すべてが粉々に砕けてしまう。

背水の陣を敷くのは、新たな生のため。

諦めることは敗北を意味するのではなく、もっと良い、もっと適したものを追い求めるためかもしれない。

姉妹二人は突然黙り込んだ。星野夏子は自分の手に握られたカップを見つめ、須藤菜々は深い眼差しで彼女を見ていた。

長い間、二人は何も言わなかった。

キッチンから彼女を呼ぶ男性の声が聞こえてきて、やっと我に返った——

「夏子、お皿とお箸を準備して！」

「はい！」

星野夏子はキッチンの入り口に向かって返事をし、深く息を吸って立ち上がった。「先に食器を準備してくるわ。座っていて、すぐに用意するから」

須藤菜々はうなずいた。

「何を話していたの？表情があまり良くないようだけど？」

キッチンの中で、藤崎さんは妻の少し物思いにふける小さな顔を見て、眉をしかめ、気遣いながら尋ねた。手の動きは止めなかった。

星野夏子は静かに息を吸い、小声で言った。「何でもないわ、ただ藤崎さんがいい人だなって思っただけ」

「美味しいものを作ってあげるからいい人なんだろう。さっきサイクリングに行かせたときは、きっと心の中で文句を言っていたんだろうな」

彼は低く笑いながら首を振り、鍋の中の料理を手慣れた様子でかき混ぜ続けた。