080章 冷淡に対応する（二）

車は安定して前進し、車内では夫婦二人が暗黙の了解で言葉を交わさなかった。星野夏子は淡々とした表情で窓の外を眺め、隣の藤崎輝は集中して運転していた。

車内では以前のように音楽がかかっておらず、今は非常に静かだった。

「何か私に言いたいことはないのか？」

藤崎輝の低い声が、この少し重苦しい静けさを突然破った。

その時、星野夏子はようやく視線を窓の外の世界から引き戻し、顔を彼の方に向けた。彼女は目を伏せ、しばらく黙った後、やっと少し苦しげで掠れた声で言った。「過去の恨みごとに過ぎないわ。言わなくてもいいことよ。いつか...気が向いたら...話すわ」

「あの人のことを何年も思い続けてきたのか？」

藤崎輝は彼女を見ず、目は依然として前方の道路に集中したまま、淡々と尋ねた。

何年思い続けてきたか？

星野夏子は彼が誰のことを言っているのか分かっていた——

彼女は自分の心の中に橋本楓がどれだけの年月居座っているのか分からなかった。物心ついた頃から、将来は必ず橋本家の嫁になるという考えを植え付けられてきた。小さい頃、彼らはいつもこう言っていた——

「夏子、楓お兄さんと遊んでおいで！」

「夏子、楓お兄さんを喜ばせる方法を考えなさい」

「楓が今日あなたのために誰かと喧嘩したって聞いたけど、どういうこと？」

しかし、認めざるを得ないのは、とても長い長い期間、橋本楓は本当に兄のように彼女を守り、彼女に優しく、彼女を気にかけてくれていたということだ。

ただ、後になって、なぜこれらすべてが変わってしまったのだろう？

かつて、橋本楓の喜怒哀楽は彼女の喜怒哀楽でもあった。彼女は彼の存在に慣れていた。そしてこのすべてが崩壊し、これらの習慣や記憶を自分の人生から無理やり切り離された時の感覚は、息苦しいほど彼女を苦しめた。

「長い間ね...星野家と橋本家は代々の友人関係で、私と橋本楓は、いわゆる幼馴染の婚約だったの。私の記憶では、父と母はいつも愛し合っていて、父が母を裏切るようなことをするなんて、当時は本当に信じられなかった...」