星野夏子が追いかけて出た時、藤崎輝と星野夏子はすでに出口を出ていて、彼女が捉えられたのは、ただ二人の冷たい後ろ姿だけだった。
「心!」
橋本楓も追いかけてきたが、星野心はすでにサングラスをかけ直し、前方の出口に向かって走っていった。その切迫した様子に、橋本楓の心も焦りを感じた。
星野心は最近、清川グループのジュエリー代表契約を結んだばかりで、その傘下のプロジェクトである帝光ジュエリーパレスはこの帝光エンターテイメントシティ内にあった。
星野心はもともと見に来ただけのつもりだったが、帝光が新しく導入したウェディングドレスがとても素晴らしかったので、彼を引っ張って見に来たのだった。思いがけず、ここで星野夏子に出会い、しかも彼女が見知らぬ男性と一緒にいて、とても親密そうな様子だった。
星野心は追いかけ続け、探し回り、ようやく外の広場の端に星野夏子が車の横に立っている姿を見つけ、急いで駆け寄った……
星野夏子は手元のファイルを閉じ、隣の木村大輔を見ながら頷いて言った。「うん、これでいいわ。ありがとう。」
それは彼女のアシスタントの梅田さんが急いで持ってきた帝光エンターテイメントシティに関するデータ資料で、彼女が以前何日もかけて整理したデータが載っていた。
「星野監督……いえ、奥様……とんでもないです!」
木村大輔はまだこの呼び方の変化に慣れていなかった。
星野夏子は淡々と微笑み、手を振って言った。「木村アシスタント、会社や仕事の時は、以前通りでいいわ。」
どう言えばいいのか、実際彼女もその三文字にはまだ慣れておらず、なんだか年を取ったような気がしていた。
「わかりました、星野監督!」
木村大輔は爽やかに笑いながら、車内を見て言った。「星野監督、先に車に乗られた方がいいですよ。外は寒いですし、この天気を見ると、年末前にまた長雨が来そうです。」
星野夏子はそれを聞いて、初めて頭を上げて空を見た。確かに空には薄暗い雲が広がっていた。ここ数日は天気が良かったのに、今はこんな状態になっていた。
視線を戻すと、藤崎輝はすでに車内の運転席にしっかりと座っていた。彼女は頷いて言った。「わかったわ。それと、商務部に連絡してくれる?ファイルは二日後に取りに行かせるって。」