通路を出るとすぐに、階段の下で待っている藤崎輝の姿が見えた。
そして清らかな足音を聞くと、彼は突然振り返り、彼女を一瞥して、黙って手を差し伸べた。
彼女は少し目を伏せ、階段を降りて、躊躇うことなく彼の方へ歩いていった。近づくと、彼の長い腕がすでに伸びてきて、彼女の肩を軽く抱いた。「帰ろう、もう遅いよ」
彼女はうなずき、少し考えてから付け加えた。「あなた、何も食べてないみたいだけど、お腹空いてない?」
「帰ってから何か作るよ」
彼は低い声でそう言った。
「実は私も、お腹いっぱいじゃなくて……」
……
橋本楓が追いかけて出てきたとき、見えたのは藤崎輝が彼女を抱きながら薄暗い街灯の下を通り過ぎる姿だけだった。彼が声をかける前に、道端で待っていた真がすでに車のドアを開けていた。