第176章 虚空の窒息感

通路を出るとすぐに、階段の下で待っている藤崎輝の姿が見えた。

そして清らかな足音を聞くと、彼は突然振り返り、彼女を一瞥して、黙って手を差し伸べた。

彼女は少し目を伏せ、階段を降りて、躊躇うことなく彼の方へ歩いていった。近づくと、彼の長い腕がすでに伸びてきて、彼女の肩を軽く抱いた。「帰ろう、もう遅いよ」

彼女はうなずき、少し考えてから付け加えた。「あなた、何も食べてないみたいだけど、お腹空いてない?」

「帰ってから何か作るよ」

彼は低い声でそう言った。

「実は私も、お腹いっぱいじゃなくて……」

……

橋本楓が追いかけて出てきたとき、見えたのは藤崎輝が彼女を抱きながら薄暗い街灯の下を通り過ぎる姿だけだった。彼が声をかける前に、道端で待っていた真がすでに車のドアを開けていた。

車はすぐに発進し、ゆっくりと茫洋とした夜の闇へと走り去った。会場内のパーティーはまだ続いており、入り口で瞬く花火が彼の目を惑わせ、そよそよと吹く夜風が乱したのは、彼の衣服の裾だけでなく、心の中の沈黙した思いでもあった。

「楓……」

どれくらい時間が経ったか分からないが、突然後ろから星野心の声が聞こえた。橋本楓が振り返ったとき、星野心がいつの間にか彼の後ろに立っていることに気づいた。

「どうしてここに立ってるの?風が冷たいよ……」

星野心は心配そうに橋本楓を見つめ、愛らしい小さな顔にはまだ脆さと青白さが残っていた。

橋本楓は彼女を一瞥し、その目は深く、言い表せない複雑さを帯びていた。しばらくして、ようやく階段を降り始めた。「車に乗ろう、送っていくよ」

「楓、今夜は私と一緒にいてくれない?」

星野心は追いかけて、橋本楓の大きな手を軽く握った。「私……少し悲しくて……」

彼女が星野夏子のことを指していることは明らかだった。先ほどのパーティーでの出来事は、おそらく多くの人が目撃しており、すでに噂話が広がり始めていた。特に藤崎輝が言った言葉によって、その場にいた多くの人が星野心に異様な視線を向けていた。星野心はトイレに行くという名目で外に出てきたのだった。

「一人で静かにしたいんだ。まずは西園に送るよ」

橋本楓はそう言い、その瞬間、星野心の顔が再び青ざめた。彼女は体を硬直させ、橋本楓を見つめながら反応できずにいた——