北川雲上錦

名門の盛大なパーティーの席で、私、星野夏子の婚約者はあろうことか実の妹にひざまずき、プロポーズをした。一瞬にして相続権を奪われ、星野家からは政略結婚の駒として、まるで生贄のように差し出される運命に。

すべてを失い、心の底まで凍てつくような絶望の中、これまでの全てを葬り去ることを決意した夏子は、最後の望みをかけてある男のもとへ向かった。彼は、瑞穂市で並外れた権力を握る『清川グループ』の若き総帥、藤崎輝。誰もが近寄りがたいオーラを放つ、クールな男。

「藤崎さん、わ、私と、結婚してください」

書類の山からふと顔を上げた輝が、夏子を捉えると、静かに立ち上がった。

「行こう」
「……どちらへ？」
「急げ。役所がもうすぐ閉まる」

こうして始まった、偽りの結婚生活。けれど、ある夜――
「そろそろ義務を果たしましょうか、奥さんとして」
「そ、そんな興味がないと聞いていたのよ！？」
「さあな、試してみましょうか」
そして、甘く乱れた一夜が明け――
「藤崎輝！この大嘘つきっ……！」

契約婚から始まる逆襲

泣きじゃくる星野心は急いで服を掴み、震える指で必死に自分の体に巻き付けた。まるで最後の救いの藁にすがるかのように、身に着けた服をきつく引き締めた！


冷淡な声が響き、一切の感情を帯びていなかった。


全身を震わせ、ほぼ崩壊寸前の星野心は、恐怖に目を見開いて目の前の冷酷で高貴な男性を見上げた。初めて地獄の縁の存在を痛感した。


なんと冷酷な手段！彼女を追い詰めるために、まさか……


冷酷無情で残忍、そう見えるのに不思議なほど穏やかで優雅な外見。誰が想像できただろうか、彼が実は冷酷で残忍な人間だということを！


彼女に疑いの余地はなかった。もし彼女が話さなければ、その結末は悲惨極まりないものになるだろう。彼は彼女があの男たちに辱められるのを平然と見ていただろう。たとえ彼女が今、身重であっても、彼には一片の憐れみも同情もないだろう。


星野心はまだ全身の震えを抑えられず、顔の涙の跡もまだ乾いていなかった。彼女はお腹に微かな違和感を感じ始めていた。きっとさっきの恐怖のせいだ！


彼女は慌てて自分の腹部を押さえ、少し恍惚とした表情で震えながら言った。「私がやったんじゃない……認めます、以前は橋本楓を尾行させたことはありますが、彼らは……何も有用な情報を得られませんでした。あの写真は……実は……藤田さんが人を使って私に送ってきたものです……私は何も知りません、本当に、私がやったことではありません！本当に私じゃないんです！」


この三文字を聞いて、藤崎輝の黒い瞳がすぐに細くなり、冷ややかに星野心の小さな顔を見つめた。「藤田さんとは誰だ？」


星野心は必死に首を振り、藤崎輝の測り知れない目を見つめながら、恐怖に震えて説明した。「わかりません！本当にわかりません！彼に会ったのは一度だけで、彼が私を見つけたんです。彼は顔を見せてくれませんでした……彼が誰なのか、どんな顔をしているのかも知りません！私が言っていることはすべて真実です。今回のことは本当に私がやったことではありません！」


「以前あなたが連絡を取っていた雑誌社の手段は、誰のアイデアだ？」


第519章 冷酷、星野心の末路！（二）

第519章冷酷、星野心の末路！（二）