「お嬢さん……あなたですか!」
コンクリートの小道を通り抜けると、驚いた声が聞こえてきた。星野夏子が顔を上げると、孤児院の年老いた大野院長と木村先生だった。
「あら、星野さんじゃありませんか!」
年老いた院長の顔に笑みが浮かび、彼女に手を振った。
ここの院長は星野夏子の姓を知っており、彼女が長期間にわたって匿名で支援してくれていることに感謝していた。何度も彼女の名前を院内に残そうとしたが、星野夏子はそれを断り続けていた。
彼女がここに来るたびに、物を届け、外から子どもたちを見て、そしてすぐに立ち去るのだった。
「新年おめでとうございます。用事の途中で寄らせていただきました」
星野夏子の美しく清楚な顔に穏やかな表情が浮かび、敬意を込めて挨拶し、手に持っていたものを木村先生に渡した。「子どもたちへのプレゼントです。みんな元気にしていますか?」