北川雲上錦

名門の盛大なパーティーの席で、私、星野夏子の婚約者はあろうことか実の妹にひざまずき、プロポーズをした。一瞬にして相続権を奪われ、星野家からは政略結婚の駒として、まるで生贄のように差し出される運命に。

すべてを失い、心の底まで凍てつくような絶望の中、これまでの全てを葬り去ることを決意した夏子は、最後の望みをかけてある男のもとへ向かった。彼は、瑞穂市で並外れた権力を握る『清川グループ』の若き総帥、藤崎輝。誰もが近寄りがたいオーラを放つ、クールな男。

「藤崎さん、わ、私と、結婚してください」

書類の山からふと顔を上げた輝が、夏子を捉えると、静かに立ち上がった。

「行こう」
「……どちらへ？」
「急げ。役所がもうすぐ閉まる」

こうして始まった、偽りの結婚生活。けれど、ある夜――
「そろそろ義務を果たしましょうか、奥さんとして」
「そ、そんな興味がないと聞いていたのよ！？」
「さあな、試してみましょうか」
そして、甘く乱れた一夜が明け――
「藤崎輝！この大嘘つきっ……！」

契約婚から始まる逆襲

そのとき、トイレの中で、星野夏子は外から足音が聞こえてきたが、特に不思議に思わず、水を流して、ドアを開けようとした。しかし、何度引いても、ドアが開かなかった！


彼女は眉をひそめ、さらに力を入れて何度か試したが、それでもドアを開けることができなかった。


明らかに、ドアは外から誰かに鍵をかけられたようだった！


星野夏子はすぐに先ほど外から聞こえてきた足音を思い出した。間違いなくあの人だ。


彼女の心に疑問が湧き上がり、目には冷たい光が宿った。ドアを叩きながら声を出した。「外に誰かいますか？出してください！誰かいませんか？」


しかし、どれだけドアを叩いても、長い間誰も応答せず、どれだけ力を入れてドアノブを引っ張っても、ドアは開かず、外からも返事がなかった！


星野夏子はようやく心に不安を感じ始め、悪い予感が湧き上がってきた。慌てて反射的に自分の脇を探ったが、ハンドバッグを持ってきていないことに気づいた……


星野夏子の心の中の不吉な予感はますます強くなった。深く息を吸い、冷静さを保ちながら、頭を上げて周りを見回した。どうやって出ようかと考えていたとき、突然灯りが少し暗くなり、星野夏子は背後から不自然な寒気を感じ、耳元で微かに「シュッシュッ」という音が聞こえた！


彼女の背中から冷や汗が噴き出し、体が反射的に縮こまり、慎重に振り返って後ろを見ると、ゴミ箱の横の上部のフックに、鮮やかな色の斑点のある蛇が巻きついているのを発見した！


今、その蛇は星野夏子をじっと見つめ、長い舌を出していた！


星野夏子の心は反射的に締め付けられ、震え始めた！


彼女が非常に恐れている生き物だった！


彼女の星のような瞳には恐怖の色が抑えきれずに浮かび、小さな顔は青ざめていた。彼女は深く息を吸い、体の横に垂れた手をきつく握りしめ、もう一方の手で反射的にドアノブを握り、力を入れて引いたが、ドアはびくともしなかった！


機敏な蛇はゆっくりと体を伸ばし、前に向かって蛇行してきた。星野夏子は恐怖で震えながら、蛇の頭がゆっくりと近づいてくるのを見て、声を出す勇気もなく、目には極度の恐怖が浮かび、きつく握った手のひらには薄い汗が滲んでいた！


一体誰がドアに鍵をかけたのか？


そして、この蛇はどこから来たのか？


第475章 驚愕！（二）

第475章驚愕！（二）