廊下を通り抜け、深田勇の書斎の前に来たとき、中を覗くと、案の定、深田勇が広い机の前に立ち、流れるような筆さばきで墨を振るっているのが見えた。そばの床には既に真っ赤な春聯が何枚も置かれていた。
「帰ってきたか!」
深田勇は手の筆を置き、入り口の方を見た。
星野夏子はようやく藤崎輝の手を離し、歩み寄って床に置かれた春聯を一瞥し、穏やかに笑って言った。「おじいさまの字はますます上手くなっているようですね、とても元気そうです。」
「この数日練習していたんだ、時間つぶしにね。」
深田勇のやせた体はゆっくりと机を回り、二人に近づいてきた。
「おじいさま。」
藤崎輝も礼儀正しく挨拶すると、深田勇はうなずいた。「お前たちが本当に私とお前の母親だけで大晦日を過ごさせるつもりかと思ったよ。まだ良心があったようだな、おじいさんのお前への愛情は無駄ではなかったよ!」