第285章 情が深まる(その一)

真……

星野夏子は少し驚いて、ゆっくりと入ってくる二人を見つめた。今朝、彼が真に電話をかけるよう頼んだとき、真はまだ東浜市にいて、明日帰ってくると言っていたはずだが?

二人は前後して歩いてきた。前を歩く藤崎輝はいつものように表情が淡々としていたが、後ろの真は何か心配事があるような様子だった。

「どこに行ってきたの?」

彼女は彼から脱いだコートを受け取り、眉をひそめて尋ねた。コートに触れると、わずかに湿っているのを感じた。

「郊外に行ってきた。夕食は済んだか?」

彼は何気なく彼女の肩に腕を回し、別荘の中へ歩いていった。真も星野夏子に挨拶した。「奥様!」

星野夏子は真に頷き、二人の風塵にまみれた姿を見て言った。「私もちょうど帰ってきてシャワーを浴びたところ……何か食べるものを作りましょうか。」

藤崎輝は頷き、視線を真に向けて言った。「少し座っていけ。夕食を食べてから帰るといい。お茶でも飲もう。」

真はそれを聞いて頷き、沈んだ表情に無理やり笑みを浮かべ、感謝の眼差しで星野夏子を見た。「はい、では奥様にご迷惑をおかけします。」

「大丈夫よ……」

「インスタント麺でいい、もう遅いから。」

藤崎輝はそう言い残すと、リビングへ向かった。真もすぐに後に続いた。

星野夏子は何か考え込むように二人を見つめ、少し躊躇してから、キッチンへ向かった。

……

藤崎輝はソファに座り、お茶を入れ始めた。真は彼の向かいに座った。

「凌子は明日の午後4時の飛行機で到着する。君の義姉から聞いているだろう。どうだ?何か言いたいことはないか?」

藤崎輝は落ち着いた様子で下の棚からお茶の葉を取り出し、急須に入れながら、静かな目で真を一瞥した。真の表情が落ち込んでいるのを見て、黙って視線を落とし、続けた。「もう5年になる……いつかは向き合わなければならないことだ。君も私を責めているのか?」

真はその言葉を聞いて、一瞬固まり、少し顔を上げて藤崎輝をじっと見つめ、首を振った。「いいえ……私は決して旦那様を責めたりしません。」