第418章 温かい時光（三）

彼女は軽く息を吸い、片手で頭を支えながら、淡々とした視線を彼の手の中の本のページに向けた。図面を見た瞬間、今日の午後に斉藤礼が持ってきた書類を思い出した。

「あっ、忘れるところだった！」

彼女は驚いて声を上げ、ようやく起き上がった。

「どうしたの？」

彼が顔を上げて見ると、彼女はすでに靴を履いて慌てて玄関へ走っていった。しばらくすると、一束の書類を持って戻ってきた。

「これ、見てみて！午後に斉藤礼が持ってきたの。私たちの要求に基づいて修正したものよ。私はあまり詳しくないから、本来はディスカッショングループの意見を聞くつもりで持ち帰ったの。」

「斉藤礼？彼がいつからそんなに積極的になったんだ？わざわざ自分で持ってきたのか？」

彼は彼女を見つめながら、低い声で言った。

星野夏子は肩をすくめた。「彼のことは分からないけど、この設計図を見る限り、彼が作ったものみたい。以前聞いたところによると、彼は海外の有名大学の建築学科の優秀な卒業生で、経営学の修士も取得しているらしいわ。すごく優秀そうね。」

「君も海外の有名大学の卒業生だろう。」

彼はそう答えてから、書類を開いた。「彼は確かに才能がある。三十歳にもならないのに、ここ数年で建築賞をいくつも受賞している。個人的には彼を評価しているよ。潜在能力は高い。もし真剣に育てれば、彼は斉藤峰よりもずっと...」

彼は話しながら、斉藤峰の名前を口にした時、無意識に言葉を止めた。手の動きも一瞬止まり、落ち着いた瞳も一瞬暗くなった。その後は続けなかった。

星野夏子は彼の反応をすべて見逃さなかった。少し考えてから、彼の腕を抱きしめた。「でも私の目には、彼がどんなに優秀でも、あなたには及ばないわ！」

「君の認識力は高まってきたね。」

彼はようやく笑顔を見せた。

「当然よ。他の人がどんなに素晴らしくても、その人は私のものじゃない。あなたが素晴らしいことだけが、私にとっては本当のこと。でも、彼は私の前であなたの悪口を言ったのに、あなたは私の前で彼を評価している。この一点だけでも、藤崎さん、あなたは彼より優れているわ。」

彼女の言葉を聞いて、彼の目は柔らかくなった。

彼女の口から褒め言葉を聞けることは、彼の心を非常に喜ばせた。

……