深田文奈も二人の間の雰囲気がおかしいことに気づいていたので、何も言わなかった。星野夏子が彼女を起き上がらせた時、彼女の空虚な目線がようやく斉藤礼の方を見たが、当然、何も見えていなかった。
母娘が遠ざかっていくのを見ながら、斉藤礼も追いかけることはせず、両手をポケットに入れたまま、黙って見つめていた……見つめていた……
しばらくして、ちょうど立ち去ろうとした時、近くのベンチに一冊の冊子を見つけた。彼は少し躊躇した後、歩み寄って拾い上げてみると——
それは非常に精巧な画集だった。
何気なく開いてみると、目に飛び込んできたのは漫画の豚だった……
とても上手く描かれていて、とても愛嬌があり、下には見覚えのある流れるような美しい筆跡で——
もし愛が私に前に進めと告げるなら、私は命の果てまで追い続けるでしょう。
次のページをめくると、また漫画の豚が描かれていた。形は前のものとは違い、とても愛らしく可愛らしかった。下にも同様に一文が書かれていた——
ある人の料理には父の味がする……
さらにめくると——
諦めるべき時は引き留めず、引き留めるべき時は決して諦めない!
……
どうやら、一字一句が励ましに満ちていた。分厚い一冊だが、前の数ページだけが描かれていて、漫画はすべて即興で描かれたようだった。
彼女はこれらの言葉で強く支えられてきたのだろうか?
斉藤礼のハンサムな顔に突然微笑みが浮かんだ。彼女があんなに冷たく無愛想に見えるのに、こんなに可愛らしい……豚?を描くなんて思いもよらなかった。
この小さな女性は大きな宝物を秘めているようで、少し掘り下げるだけで、思いがけない驚きがあるのだ!
藤崎輝が彼をすぐに自分の翼の下に置いたのも不思議ではない。しかし、守り続けられるかどうかは、まだわからない!
しばらくして、斉藤礼はゆっくりと画集を閉じ、顔にはまだかすかな笑みを浮かべていた。母娘が去った方向を見上げると、そこにはもう彼女たちの姿はなかった。
……
病室に戻り、深田文奈をベッドに寝かせると、藤崎凌子が魔法瓶を持ってやってきた。
大野恵子が深田文奈のために特別に煮込んだスープで、味はとても良かったようで、深田文奈は続けて二杯以上も飲んだ。
藤崎凌子と深田文奈はそれほど疎遠ではなく、楽しく話し、長い時間を過ごしてから帰っていった。