第231章 茫然と喪失感(一)

星野夏子は階下に降り、入り口を通り過ぎる時、大勢の記者たちが月影に押し寄せようとしているのを見た。月影の警備員はほぼ全員が動員されて、やっと彼らを阻止することができていた。

彼女は足を止めることなく、人混みを通り抜けて車の側まで来た。

「星野監督、直接会社に戻りますか?」

星野夏子の表情が冷たく無感情で、いつもより一層冷たさが増していることを見て、梅田さんは恐る恐る尋ねた。

星野夏子はドアを開けて座り、シートベルトを引っ張って留めながら淡々と言った。「まず、これを橋本氏に届けてくれないか、それから資料を広報部に戻してほしい」

そう言いながら、脇から分厚い茶封筒を取り出して梅田さんに渡した。

梅田さんはドアを閉め、封筒を受け取りながら、少し不思議そうに眺め、印刷された住所を見て驚き、振り返って星野夏子に何か聞こうとしたが、彼女の冷たい表情を見て、質問する勇気が出なかった。