017章 愛したことがあるから情の重さを知る(一)

「坊ちゃま、大野さんに電話して来てもらいましょうか?」

書類を書斎に持って行き、藤崎輝が寝室から出てくるのを見て、真は小声で尋ねた。

藤崎輝は少し体を傾け、ベッドで丸くなっている女性を一瞥してから、頷いて淡々と言った。「彼女に合う服も一緒に持ってくるように言っておいて。」

そう言うと、向かいの書斎へ歩いていった。

真は頷いて返事をし、それ以上は何も言わなかった。坊ちゃまが夜中まで仕事をするのはよくあることで、仕事中に邪魔されるのを嫌がっていた。

なるほど、この星野さんも清川グループの社員で、しかも優秀な上級管理職だったのか。見た目はかなり若く、美人でもある。だから老会長が密かに彼に坊ちゃまのために気を配るよう言っていたのだろう。

奥様が彼にこっそり探りを入れていたことを思い出し、真は思わず無力に首を振り、小さく笑った——

実際、おそらく坊ちゃまは外の人々が言うように、あまりにも冷淡な性格なのだろう。4年前からずっと風のように冷たく、4年後には冷淡さに加えて疎遠で薄情な感じが増し、全体的にさらに深く寡黙になり、人が近づきにくい雰囲気を醸し出していた。

真は思った、この一生、おそらく坊ちゃまの心を温められる人はいないだろうと。

しかし、坊ちゃまはこの星野さんにはいくらか丁寧だった。彼女がその例外になるのだろうか?

大野さんに電話すると、彼女はすぐに駆けつけてきた。

大野さんは坊ちゃまの身の回りの世話を専門に担当する使用人で、楓の館の管理人でもあった。万能な管理人で、人柄も非常に親切で優しく、40代の年齢だった。

眠りの中で星野夏子は体が熱くなったり冷えたりするのを感じていた。その後、誰かが彼女に薬を飲ませ、彼女は再び深い眠りに落ちた。その後も誰かが彼女の汗を拭き続け、彼女は非常に不快で喉が乾いていると感じると、その人は察して時々彼女に水を飲ませてくれた……

夜はますます深まり、真はとっくに帰っていたが、楓の館の2階のある二つの部屋ではまだ灯りがついていた。

大野さんは静かに書斎のドアをノックし、中から低い返事が聞こえてから、ゆっくりとドアを開けた。顔を上げると、大きな机の前に座って熱心に仕事をしている坊ちゃまが見えた。