第389章 他人の不幸を喜ぶ(1)

藤崎家も深田文奈のことを知っているだろう。

以前は新聞でも大騒ぎになっていたし、知らないほうが難しいだろう。少し平穏な日々を過ごしたいだけなのに、なぜそれがこんなにも難しいのだろう?

星野夏子は物憂げにため息をつくと、切れた電話を片付け、そして前方の売店へと歩き続けた。

深田文奈はずっとベンチに静かに座り、手には星野夏子が先ほど渡した携帯電話を持っていた。暖かな陽の光が彼女の上に優しく降り注いでいた……

今日の彼女はいつものような清楚で上品な装いではなく、大きな病院着を着ていて、より痩せて見えた。かすかに美しい顔立ちは静かで優雅に見えた。

彼女は頭を下げ、焦点の合わない目を一生懸命瞬かせ、手の中の携帯電話が見えるかどうか試そうとした。手探りしながら、しかし彼女が触れた瞬間、手の中の携帯電話が滑り落ちてしまった。