第383章 怒り(一)

医師が一通り説明を終えると、部屋を出て行った。

「お母さんは退院したいの?」

星野夏子は隣のソファに座り、小声で尋ねた。

「彼女は病院が嫌いで、退屈だから退院したいと言っているんだ」

向かいに座る星野山は少し暗い表情で答え、その声にも明らかな落胆が隠せなかった。

星野夏子は一瞬躊躇し、無意識に隣の藤崎輝を見た。彼が考え込むように星野山を見ていることに気づき、何か言おうとした時、ドアから軽いノックの音が聞こえた。

全員が素早くドアの方を見ると、まだ腕を吊っている真の姿があった。

「若様!」

真は軽く会釈をして、声をかけた。

藤崎輝はゆっくりと立ち上がり、部屋を出た。

……

藤崎輝は廊下のベンチに座ると、真はすぐに茶色の封筒を差し出した。「若様、これが整理した資料です。木村大輔のものも含めて。後で指示された件はまだ調査中です」