第117章 実はもっと卑怯になれる(二)

星野夏子が言った食事とは、藤崎輝を直接ニューセンチュリープラザ近くの火鍋店に連れて行くことだった。

火鍋店は人でいっぱいで、夫婦の席は端の隅にあり、振り向いて隣の窓から外を見ると、ニューセンチュリープラザの下の広場が見えた。

彼女は今日の食欲が良さそうで、注文した料理の大半は彼女のお腹に入り、藤崎輝はあまり食べず、もっぱら彼女のために具材を湯がいていた。

今、夏子さんは箸を持って鍋からレンコンを取り出し、自分の器に入れようとしたとき、何かを思い出したように、急に顔を上げて、向かい側でお茶を飲みながらほとんど箸を動かしていない男性を見た。「料理は口に合わないの?全然食べてないみたいだけど?」

そう言いながら、ざるですくった大量の具材を彼の器に入れた。

「あなたは食べなさい。私は妻の戦闘力がどれほどのものか見てみたいんだ」

藤崎輝は彼女の腕を静かに押さえながら低い声で答え、深い目で横にある空になった皿を一瞥した。

星野夏子は彼の視線に従って見て、自分の驚くべき食欲が男性を驚かせたことに気づいた。

「前にも見たことあるでしょ...」

彼女はぼんやりと手を引き、静かに頭を下げた。

「その表情はなんだ、私はあなたを嫌っているわけじゃない。よく食べるのも福だよ。あなたは痩せすぎだ。もう少しふくよかになれば、あなたの魅力がもっと引き立つだろう」

藤崎輝は意味深な目で彼女を上から下まで見て、そう言いながら横にあったナプキンを取って彼女に渡した。

「男性はみんな骨感美を求めるんじゃないの?」星野夏子は手を伸ばしてナプキンを受け取り、口元を拭いてからグラスを持ち上げ、顔を上げて彼を見た。「今日のこと、私たちがやったことは少し卑怯だと思わない?」

彼女の言葉に、藤崎輝は眉を上げ、平然と彼女を見つめたが、何も答えなかった。

彼女は目を伏せ、眉をひそめながらお酒を一口飲み、息を吸い、整った小さな顔に冷笑が過った。「実は私はもっと卑怯になってもいいと思ってる...」

ここまで言って、彼女は突然目を上げて彼を見て、興味深そうに笑った。「藤崎さん、てっきりあなたは怒り狂って彼女と契約を解除し、清川から追い出すかと思ったわ」