結婚式は帝光グランドホテルの7階で行われることになり、翌日簡単に昼食を済ませた後、藤崎凌子たちは直接ホテルへ向かい、結婚披露宴の準備を始めた。
招待された客はそれほど多くなかったが、親族や友人、あるいは付き合いのある人々ばかりだった。二人の結婚の知らせは大々的に宣伝されておらず、比較的控えめなものだった。また、披露宴会場には記者の入場が禁止されていた。
藤崎輝はこうしたゴシップ記者に対して少し抵抗感を持っており、それは業界の人々も知っていることで、藤崎凌子はなおさら理解していた。
「藤崎管理人、あちらの照明はこれでよろしいでしょうか?」
披露宴会場のステージ脇で、藤崎凌子がマイクのテストをしている間、向かい側で照明を調整しているスタッフが微笑みながら尋ねた。
藤崎凌子は顔を上げ、周囲を見回してから、しばらくしてから頷いた。「大丈夫です。プログラム通りに一度試してみて、問題なければそれでいいです。」
「藤崎管理人、そろそろ時間です。あと30分もすれば客が入場し始めます。会長たちは接待で忙しいですし、奥様があなたに藤崎取締役に電話するよう言っていました。」
「藤崎管理人、音響の調整が完了しました!」
「わかりました、すぐに見に行きます。あなたは先に祖父母たちに伝えてください。兄たちはもうすぐ到着するから、安心するようにと。」
藤崎凌子はそう言い残すと、ポケットから携帯電話を取り出し、楓の館に電話をかけた。
電話を受けた時、藤崎輝と星野夏子はちょうど支度を終えて出かける準備をしていた。木村大輔はすでに階下のリビングで長い間待っており、藤崎凌子からの電話を受けると焦り始めた。
階段から足音が聞こえてきて、ようやく安堵の息をついた彼は顔を上げると、藤崎輝と星野夏子がゆっくりと階段を降りてくるところだった。
「旦那様、奥様、凌子さんから電話がありました。向こうの時間がそろそろなので、早めに出発するようにとのことです。」
木村大輔が言った。
藤崎輝は頷き、落ち着いた様子で自分の袖を軽く引っ張った。「出発しよう。須藤旭たちにも知らせておいて。」
「はい、旦那様!」
木村大輔はようやく返事をし、急いで脇に退いて二人を先に行かせた。