第411章 夏夜への嫁入り道具（三）

「誰があなたに彼の家の宝物は彼の奥さんだと言ったの？」

藤崎輝は気にせず、彼女のために椅子を引いた。彼女は素直に座り、美しい長い髪は既に無造作に後ろで結ばれ、快適な部屋着を着た彼女は少し若奥様の清楚さを醸し出していた。

数日前の憂鬱な彼女と比べると、今はだいぶ回復していた。

「違うの？」

「あなたは確かに我が家の宝物だけど、彼の家の宝物はペルシャ猫だよ」

藤崎輝は彼女の向かいに座り、長い腕を伸ばして彼女のためにステーキを切った。彼女が驚いて眉を上げるのを見て、一切れのステーキをフォークで刺し、彼女の口元に差し出した。

彼女は喜んで口を開けて食べた。

「おじいさんのことも一段落ついたし、さっき木村大輔がおじいさんが前にあなたに渡したあの書類袋を持ってきた。おじいさんがあなたに贈る持参金だよ」

藤崎輝は手慣れた様子でステーキを切りながら、淡々と言った。

そう言われて、星野夏子はようやく以前のことを思い出した。星野陽が去る時、彼女に何か持参金を与えると言っていたが、彼は彼女と藤崎輝の結婚式を見ることができないと…

「どんな持参金なの？」

しばらくして、彼女はようやく尋ねた。

真剣にステーキを切っていた藤崎輝は、彼女の声色に物悲しさを感じ、顔を上げて彼女を見た。彼女の眉間に避けられない憂いが染み込んでいるのを見て、また一切れのステーキを彼女に食べさせ、低い声で言った。「西園の所有権と、市東のいくつかの土地の所有権だよ。価値は低くない。おじいさんは前に大野弁護士に指示して、遺言を作っておいた。それらは今すべてあなたのものだ。後で署名して、木村大輔に公証してもらおう」

西園の所有権！

星野夏子はこれを聞いて驚き、目の中の輝きが一瞬止まり、驚いて顔を上げて藤崎輝の深い瞳と向き合った。

「これは彼があなたへの償いだよ。遠慮する必要はない。受け取ることで老人も安らかに眠れる。後で署名しておいて。あの女たちは今や虎視眈々と狙っていて、これらが父の手にあると思っている」

藤崎輝は切り終えたステーキを前に、彼女に赤ワインを注いだ。

「おじいさんは…」

星野夏子は何か言おうとしたが、言葉が口元まで来て、薔薇色の唇が動いたものの、突然何を言えばいいのか分からなくなった。フォークを握る手が一瞬きつくなり、しばらくして、ようやく目を伏せ、軽く頷いた。