夕食を終え、レストランから出てきた時、外の灯りはちょうど華やかに輝いていた。風が強く、冷たく、夜空はどこか重苦しく深く沈み、空気には湿気が漂っていた。
立春を過ぎた日々、瑞穂市は南寄りの都市なので、毎年立春の後にはこのような天気が続く時期がある。今年の春は例年より早く訪れ、この季節は星野夏子の好きな季節ではなかった。
少し諦めたように車窓の外に降り注ぐ細かい雨を見上げ、しばらくして、星野夏子は突然、隣で集中して車を運転している男性の方を振り向いた。車内はとても静かで、二人の呼吸音がかすかに聞こえるほどだった。
「音楽でもかけましょうか」
星野夏子が突然口を開いた。
「CDは下の収納に全部ある」藤崎輝は低い声で答えた。
星野夏子は身を屈め、収納を開け、手当たり次第に一枚を取り出し、プレーヤーを開けてCDを入れた。すぐに、プレーヤーからどこか遠くに感じる歌声が流れ始めた。