第363章 波乱(三)

須藤菜々のあの澄んだ声が耳に入ると、橋本楓は確かに一瞬固まり、その端正な顔がわずかに暗くなった。

「本当に彼らの結婚式が楽しみね、夕日があって、ビーチがあって、考えただけで幸せな気分になるわ……星野夏子が言ってたけど、あんな場面は、本当に帰属感があるって。彼らがずっとそのまま年を取っていくことを願うわ……」

深田文奈も馬鹿ではないので、須藤菜々のこの言葉が橋本楓に向けられたものだと分かっていた。須藤菜々を見て、目の端で橋本楓の方も見ると、確かに彼の暗い表情に気づいた。何か言おうとした時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた——

「お母さん、こっち、私たちここに座るわ!」

優しい声には微かな柔らかさが含まれ、空気中にはほのかな香水の香りが漂ってきた。

「楓!」

……

あんな作り笑いの声、須藤菜々は考えるまでもなく、誰のものか分かっていた。

案の定、振り返ってみると、岡田凛子と星野心が彼女たちの後ろの近くに座っていて、橋本楓の左側にいた。

おそらく須藤菜々の視線に気づいたのか、星野心もすぐに彼女の方を見た。須藤菜々と深田文奈を見るなり、その美しい顔は一瞬で何度も表情を変え、目も冷たくなり、無意識に隣の岡田凛子の方を向いた。

岡田凛子も当然、清楚で優雅な深田文奈を見ていた。年齢を感じさせない彼女の顔は嵐の前の空のように暗くなり、美しい目からも冷たい光が放たれた……

しかし深田文奈は冷ややかに彼女を一瞥しただけで、あの落ち着いた表情で見ていた。まるで道化師を見るかのようだった。少なくとも岡田凛子にはそう感じられた。

岡田凛子の心の中で抑えていた怒りの炎がさらに燃え上がった——

彼女はさっき誰かが星野山が早応大学に行ったと言うのを聞いた。きっとまたあの老いぼれ女を訪ねたに違いない!あの得意げな顔つき、岡田凛子は今すぐ飛びかかってあの冷静な態度を引き裂いてやりたかった。

「お母さん、興奮しないで、場所を考えて!」

星野心は岡田凛子が怒り爆発寸前の様子を見て、すぐに注意したが、心の中では多少不満だった——

岡田凛子は最近本当に感情のコントロールが効かなくなっている。以前は灰皿で星野山を殴ったりして、今でも星野山は家に帰っても彼女に一言も話さない。星野心の挨拶にも冷たく返事するだけだった。