057章 藤崎さんはナルシスト（二）

木村先生は一瞬固まり、思わず押し返して言った。「いいえ、これはダメです。あなたが物を持ってきてくれるだけでいいんです。毎回お金をもらうわけにはいきません…」

しかし、彼女が言い終わる前に、星野夏子は容赦なく紙袋を彼女の胸に押し付けた。「子供たちへのお年玉だと思ってください」

木村先生は諦めてため息をついた。毎回彼女はこうで、断ることを許さない。

「中に入って子供たちに会わないの？少なくとも、あなたがこの数年間ずっと彼らを陰で支援してきたことを知らせれば、彼らが大きくなったとき、感謝の気持ちを持つでしょう…」

星野夏子は軽く首を振り、陽の光の中で楽しそうに遊ぶ子供たちを見つめながら、清楚で美しい顔にふと淡い笑みを浮かべた。「必要ありません。彼らが元気でいるのを見るだけで十分です。すべての子供たちは、幸せな子供時代を持つべきですから…」

そう言い残すと、木村先生に明るく微笑んで、さっと身を翻して去っていった。

木村先生はハッとして、徐々に遠ざかる星野夏子の痩せた背中を見つめ、目に感謝の色が浮かんだ—

四年以上経つが、彼女はほぼ毎月訪れ、毎回物かお金を持ってくる。しかし、来るたびに鉄柵の外から子供たちが遊ぶのを見ているだけで、一度も中に入ったことはなく、自分の名前も決して明かさなかった…

子供たちにこの親切な人のことを覚えておいてほしいと思うが、どう紹介すればいいのかわからない。

……

星野夏子はゆっくりと柵に沿って歩き、大きなガジュマルの木の下を通り抜けた。涼しい風が吹き、落ち葉が舞い散る中、彼女の視線は一瞬も運動場から離れなかった。突然、壁にぶつかるまで。馴染みのある淡い冷たい香りが鼻をつき、彼女は思わず足を止め、すぐに視線を向け変えた。

しかし、大きな手が素早く彼女の両腕をつかみ、叱責するような声は感情的な優しさを含んでいた。「いつもこんなに不注意だね。前が刀山でも同じように突っ込むんだろうな」

突然現れた男性を見て、星野夏子は星のような瞳を大きく見開き、驚いて声を失った。「藤崎輝、どうしてここに？」