第316章 ありがとう、夫人（その一）

斉藤礼の邪悪な美しい顔が冷たく沈み、全身に冷気が漂い、彼の隣にいた女性も明らかにそれを感じ取り、思わず震え、不安そうに彼を見た。

「ねえ、何て言い方してるの！」

その女性はようやく藤崎凌子を睨みつけ、一方で斉藤礼の腕に手を回したが、斉藤礼は女性の手を振り払い、冷たい表情で近づいてきた。彼は藤崎凌子の前で足を止め、高い位置から冷たく彼女を見下ろした。藤崎凌子も少しも怯むことなく背筋を伸ばし、一瞬も目を離さずに彼を見つめた。

しばらくして、斉藤礼は怒るどころか笑い出し、顔の冷たさが一瞬で隠れた。彼は冷笑しながら頷いた。「さすがは口達者だな！」

「私はある種の人間にはこういう態度なの。もし斉藤さんが今日純粋に楽しみに来たのなら、私、藤崎凌子は大歓迎よ。でももし問題を起こしに来たのなら、私が失礼になっても文句は言わないでね！」