077章 すれ違い(二)

しかし、星野夏子さんは男性の顔が曇るのを見ることができず、逆に、藤崎輝の高貴で清潔感のある顔に浮かぶ微笑みはますます人を魅了するものだった。

「安すぎる。売らないことにする」

彼は笑いながら言った。

「売ってよ、私はいい人だから、私についてくれば、損はしないわ」

「それは私が言うべきセリフじゃないのか?いつの間に盗み聞きしたんだ?」

「してないわよ!」

……

夫婦二人がこのように言い合っているうちに、車はすぐに帝光エンターテイメントシティに到着した。

いわゆる帝光エンターテイメントシティとは、実際には一連の商業化された消費エリアのようなもので、中級と高級の二つのレベルに分かれており、瑞穂市の北城から市中心部につながる場所に位置し、市内で新しく建設された超高級娯楽消費エリアの一つである。