第273章 愛のため?(二)

一輝は頷いた。何か言おうとしたが、星野山が目を閉じて静かになったのを見て、邪魔するのは忍びなく、諦めた。

黙って車に乗り込み、そのまま東大病院へと向かった。

その頃、東大病院の星野心の特別病室では、心はすでに目を覚まし、顔色は青白く憔悴していた。全体的に痩せて見え、顎もとがって、この間の出来事で相当苦しんだことが見て取れ、今も疲れ切っていた。

彼女はベッドの頭に寄りかかり、手には携帯電話を握りしめ、何度も橋本楓に電話をかけていた。しかし、相手の電話は電源が切れているという案内ばかりだった。彼女の表情は異常に緊張し不安げで、かつての美しい瞳はすでに制御できないほど赤くなり、目は虚ろだった。

傍らで岡田凛子がリンゴの皮を剥いていたが、心のそんな様子を見て心配そうに言った。「心、焦らないで。楓は何か用事があるのよ。少し落ち着かせてあげましょう。昨晩のことは彼にとって確かに…」

「焦らないって?お母さん…どうして焦らずにいられるの?彼は今までこんな風に私を扱ったことなんてない…きっと怒っているのよ、お母さん…彼は私と赤ちゃんを見捨てるつもりなの?お母さん…」

星野心は恍惚とした表情で振り向き、携帯電話を強く握りしめ、赤い目で岡田凛子を見つめた。「お母さん…本当に辛いの…」

星野心のそんな憔悴した姿を見て、岡田凛子も心を痛め、急いで慰めた。「変なことを考えないで、心。あなたはまだ彼の子供を身ごもっているのよ。彼があなたを捨てるはずがないわ。安心して。橋本家も…彼らも同意しないでしょう。それに、あなたたちはまだ結婚したばかり。これからの道はまだ長いのよ。そんなバカなことを言わないで。」

「お母さん、私は本当にわざとじゃなかったの…でも、そうしなければ、楓は私の良さを見てくれなかった…今は私を憎んでいる、私を捨てたのよ、お母さん…」

星野心は乾いた目を見開き、鼻をすすり、また橋本楓に電話をかけながら言った。「だめ、彼に説明しなきゃ…この世界で私ほど彼を愛している人はいないの。彼は私と赤ちゃんをこんな風に捨てることはできない…」