第272章 愛のため?(一)

星野夏子は黙り込んだ深田文奈をしばらく見つめた後、もう何も言わず、ゆっくりと書斎を後にした……

外では藤崎輝がすでに食器を片付け終え、ソファに座ってテレビを見ていた。

「外に散歩に行きましょう」

星野夏子は彼にお茶を差し出しながら言った。「週末だし……学生たちは遊びに出かけているから、人もそんなに多くないわ……」

彼は手を伸ばしてお茶を受け取り、一口飲んだ。彼女の眉間にわずかな物思いの色が浮かんでいるのを見て、頷いて、カップを置いて立ち上がった。「コートを着てきて」

星野夏子は返事をし、迷いながら書斎を一瞥した。まぶたを伏せて少し考えてから、ドアの前に立って言った。「お母さん、私たちはキャンパスを散歩しに行くわ……」

言葉が落ちてもしばらく深田文奈からの返事はなく、星野夏子は少し黙った後、仕方なく振り返り、ハンガーからコートを取って出かけようとした。