第281章 すでに求めるものがある(二)

清明の季節、細かい雨が降り続き、幾度かの軽やかな雨が降ると、瑞穂市全体が霞んだ風景に包まれた。冷たい風は相変わらずで、どんよりとした空模様は人の心まで圧迫するようだった。

橋本氏の社長室内では、何日も姿を消していた橋本楓が、今ソファに寄りかかりながらグラスを手に、一杯また一杯と酒を口に流し込んでいた。

かつての端正な顔に宿っていた冷たさや格好良さはもはやなく、今残っているのは寂しさと青白さ、全身から漂う疲弊感だけだった。

会社は休みで、今や社内は空っぽで、誰一人として影もなく、陰鬱な霧雨に包まれ、静寂が人の息を詰まらせるほどだった。

傍らのテーブルに置かれた携帯電話は絶え間なく振動し続け、一度も止まる様子はなかったが、その持ち主は一度も電話に出ようとしなかった。心地よい着信音が静かで重苦しい空間に流れ、一層冷たく感じられた。