第153章 おはよう、藤崎奥さん(二)

向こうは何でも揃っているので、整理する必要があるのは商談用の契約書といくつかの資料だけだった。

星野夏子は階段を上がると真っ直ぐ書斎に入り、広い机の前で書類を整理しようとしたとき、机の上のノートパソコンがまだ開いたままでスタンバイ状態になっていることに気づいた。

そして彼女は鋭い目で、昨日見たのと同じように、それが自分のノートパソコンであることにも気づいた。

少し考えてから、ゆっくりと椅子を引き寄せ、のんびりと座り、マウスを操作してパソコンの画面を開くと、目に飛び込んできたのは、複雑なデータとグラフの山だった。よく見ると、それは彼女が担当している南浦プロジェクトの企画案だった。

下のデータ分析はすでに処理されており、彼女が一通り目を通してみると、最も複雑なデータ処理と分析の部分がすでに彼によってほぼ整理されていることに気づいた。残っているのは企画案を書くことだけだった。

この部分の作業量の多さは、彼女自身も少し頭を悩ませるほどだったが、彼は……

まさか昨晩のことが終わった後も、彼は一晩中眠らなかったのだろうか?

黙って文書に目を通すと、横には大量の資料が置かれていた。彼女の心にはふと温かさが広がり、澄んだ瞳に微かな光が宿った。しばらく呆然としていたが、やがて軽く息を吸い、保存をクリックしてパソコンを閉じ、書類の整理を始めた。

藤崎輝が書斎に入ったとき、夏子はすでにほとんど整理を終えており、机の上の不要な文書や本を順番に本棚に戻しているところだった。

本棚はとても高く、ぎっしりと並んでいて、彼女の身長では上から三段目に手が届くのがやっとだった。彼女がつま先立ちで苦労して本を戻そうとしている様子を見て、彼は思わず笑みを浮かべた。

ドアの所に立って彼女の奮闘を見ていたが、やがて大股で歩み寄り、彼女の手から本を受け取ると軽々と本棚に戻した。少し困ったような低い笑い声が風のように彼女の耳元を撫でた。「頭を回して、椅子を持ってくればいいのに」

突然の動きと声に彼女は一瞬驚き、振り向くと、彼がいつの間にか背後に立っていることに気づいた。

彼女はいつものように眉をひそめ、少し考えてから答えた。「探すのが面倒だったの」