藤崎凌子は嬉しそうに微笑み、大野恵子の隣に座って答えた。「兄が帰ってきたとき、一緒に帰りたかったんだけど、向こうの仕事がまだ片付いていなかったから、もう少し滞在していたの」
「帰ってきて当然よ。私とお祖母さんはもう引退して暇なんだから、しばらく仕事を急がずに私たちと過ごしなさい。お祖母さんはずっとあなたのことを心配していたのよ」
話していたのは傍らにいた藤崎悠だった。
「もう義姉さんと明後日から仕事を始める約束をしたの。この数日間は向こうでゆっくり過ごしたから、十分休めたわ。これからはよく会いに来るから、安心して、おじいちゃん、おばあちゃん!」
藤崎凌子は肩をすくめて笑いながら言った。「キッチンに行って、ママが何か美味しいものを作ったか見てくるわ」
そう言って、藤崎凌子が立ち上がろうとしたとき、玄関から「真様、こんにちは!」という声が聞こえた。彼女はハッとして、思わず玄関の方を振り向くと、黒い上品なスーツを着た真が外から入ってきて、使用人たちに挨拶をしているのが見えた。