第491章 尾行(一)

本来は藤崎家の旧邸で夕食を済ませてから帰るつもりだったが、夫婦二人が荷物をまとめたところで、藤崎輝の携帯が鳴り始めた。

どうやら省庁からの電話のようで、おそらく何か急ぎの用事があり、藤崎輝に一緒に夕食を取るよう誘っていた。

藤崎輝は断るつもりだったが、星野夏子は彼に行くよう勧めた。彼女はちょうど荷物を藤崎凌子に届けに行くところだったし、今朝出かける時にそれらの荷物を整理して車に積んでおいたので、約束の場所に行く途中で藤崎凌子のところを通ることになっていた。

「前の交差点で止めて、人は連れて行って」

あるエンターテイメント施設の中心ビルの下に車で到着したとき、藤崎輝が突然口を開き、シートベルトを外した。

「私は大丈夫よ、あなたが連れて行って。正式な場だし、あなた一人だと寂しいでしょう。元々あなたについて来た人たちだし」

彼らの後ろにはもう一台の車が続いていた。黒服のボディガードたちだ。

最近少し物騒になっていたため、真と木村大輔の強い主張により、藤崎輝は外出する際には必ず護衛を連れていくようになった。東浜市のような状況に遭遇しないためだ。さらに星野夏子のために女性ボディガードを探すことも計画していた。人選は真が進めており、彼が戻ってくれば人も配置できるはずだった。

星野夏子がそう言うと、車はすでに施設の中心ビルの下に入り、静かに停車した。

「大丈夫だよ、届けてからそこで少し座っているだけだから。うん、夜の9時半頃にまた迎えに来るよ」

「気をつけてね。携帯の電池は大丈夫?」

夏子さんはかなり不注意な人で、携帯の電池が切れて連絡が取れなくなることもよくあった。

彼女は手際よくバッグを開け、少し探った後、すぐに携帯を取り出した。電池は満タンだったが、彼女がそれを確認する間もなく、隣の男性がそれを受け取り、代わりに自分の携帯を彼女に渡した。「車で充電しておいて。気をつけてね」

手際よく携帯を手に取ると、彼はすぐに車を降り、すらりとした背筋の伸びた姿はすぐに入口の中に消えた。後ろの黒服のボディガードたちも続いた。

彼の姿が前方の明かりの中に消えるまで待ってから、星野夏子は再び車を発進させ、先へと急いだ。

真と藤崎凌子の別荘に到着したとき、空はちょうど暗くなり始めたところで、辺りは灰色の薄暗さに包まれていた。