第367章 心碎(三)

めったにこのような静かで温かい時間を楽しむことのできない若い夫婦は、この時、瑞穂市の第一病院で、彼らの最も近しい人が苦しみに耐えていることを知らなかった。

手術室の外のベンチで、星野山は一瞬も目を離さずに手術室のドアを見つめていた。いつも深く冷静な黒い瞳には暗さが宿り、引き締まった顔にも疲労と憔悴の色が浮かんでいた……

傍らにいた一輝も黙って見守っていた。手には冷たくなった濡れタオルを持っていたが、星野山の手には血が乾いていた。近づこうとしたが、彼のあの様子を見ると、しかし……

待っていたのは須藤菜々もだった。今の菜々は両目を真っ赤に泣き腫らし、目には恐怖の色が満ちていた——

彼女は知っていた。深田文奈があの時、彼女を守ろうとして岡田凛子に押されて、バランスを崩して階段から落ちたのだと。だから今、彼女はとても自責の念に駆られていた。