045章 赤い小冊子(二)

「南浦プロジェクトのことなら、私は他の人に任せるから、君はしばらくの間、楓の館でゆっくり傷を癒すことに専念してほしい。今後一ヶ月間、休暇を与える」

藤崎輝は眉をしかめながら、真から注がれたお粥を受け取った。

「本当に大丈夫だから、すぐに退院しても問題ないわ。南浦プロジェクトは私が提案したものだし、最初から最後まで責任を持ってやり遂げたいの。ただの小さな傷だけよ。あなたも一日中忙しかったでしょう、早く帰って休んで。私一人でも大丈夫だから」

外はもう深夜だと知っている星野夏子は、当然彼の時間をこれ以上取りたくなかった。明日の会社には重要な朝の会議があり、新任の取締役として、彼は公務で忙しいはずだった。

それを聞いて、藤崎輝の眉はさらに深くしかめられた。彼が反応する前に、星野夏子は手を伸ばして彼の手からお粥を受け取った。「私一人でできるから、帰って休んで。明日の会社の朝の会議は重要だし…」

星野夏子の声がまだ消えないうちに、藤崎輝の低く、少し諦めを含んだ声が耳元を過ぎた。「夏子、君はさっき書類にサインした意味をもう忘れているようだね。もし結婚という言葉の意味がまだわからないなら、説明してあげてもいい。結婚とは、私たちがお互いに責任と義務を築くことだ。君は今、藤崎輝の妻だ。君の世話をするのは私の避けられない責任と義務だ。少しは自覚を持てないのか?何か要求はないのか?」

藤崎輝の言葉が落ちると、肩の痛みを我慢しながら苦労して茶碗を持っていた星野夏子はハッとして、彼を見上げた。彼の深い瞳に流れる不満げな深さを見て、心の底から柔らかくなった。

しばらくして、少し目を伏せ、黙った後、突然手を挙げ、かすれた声で堂々と言った。「わかったわ、藤崎さん、私には要求があります!南浦のプロジェクトを私から取り上げないでほしいし、明日退院したいです!」

星野夏子のこの動作と堂々とした言葉に、傍らで藤崎輝の言葉に驚いていた真は思わず笑い声を漏らした。すぐに藤崎輝から暗い冷たい視線を受け、真はそこで軽く咳をした。「若旦那、お医者さんに奥様の状態を聞いてきます!」